オードリーとスティーブ、そして2人が愛する

電気自動車

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「ある夜に行われた音楽ライブで彼と出会いました。彼は、15年前から趣味で電動化していた電気自動車に乗ってきていたのです。とても気に入ったわ。そして、『いい?よく聞いて。これをビジネスにするわ』と伝えたのです」

— オードリー・クラン

異なる地元のバンドでプレイしていたオードリーとスティーブ。しかし、ある夜の音楽ライブに2人が出演したことで、それぞれが歩んでいた道が1つに重なった。スティーブは自身が電動化したピックアップトラックである白のマツダ製プロシードで颯爽と会場に現れた。「それって電気自動車?」と尋ねるオードリー。「その通り」と回答するスティーブに対し、「とても気に入ったわ」とオードリー。それからのことは、言うまでもないだろう。

出会った瞬間から、共通の趣味である電気自動車(EV)で意気投合した2人。しかし、スティーブにとってはほとんど採算の取れない趣味でしかなかった。彼がオードリーと出会うまでは。

「家に素敵な56年式のフォード車が届き、とても気に入りました。もちろん彼もね。そうして、2人で電動化することになったのです」

— オードリー・クラン

当初、彼にはシンプルな販売計画があった。彼が車を購入して電動化し、誰かパートナーを探して販売してもらうという計画だ。「君が運転して、みんなに車を披露して、誰かに買ってもらう。そしたら僕が次の車を製作する。そんなことを考えていたら、すごいアイデアを持っていたオードリーと出会ったのです。私が知らないうちに彼女は仕事を辞めていました」

A men and a woman sitting in a workshop working.

本当に好きなことを仕事にしていれば、自分が「働いている」と感じることはない。作業場にいるオードリーとスティーブ

ロマンティックなラブストーリーがそうであるように、彼らの進む道も平坦ではなかった。ビジネスをスタートした矢先の2008年に大不況が到来し、突如として八方塞がりになってしまった。「みんな家を失いました。まさに災難でした。『こんな時、ミュージシャンだったらどうする?』と考えた時に、きっと『当方ギター弾き、出張可』という看板を掲げるだろうなと思ったのです」とオードリーは語る。その後9年間、彼らはその言葉通りの活動を行った。カリフォルニアからテキサス、オクラホマからヴァージニアまで全米を駆け巡った。電話があればどこにでも駆けつけ、ガソリン車やディーゼル車を電動化していった。

A green electric Ford Truck from behind in a wooded landscape.

トレードマークである完全電動のフォード製56年式トラックに乗るオードリーとスティーブ

長年にわたり数えきれない台数の車を電動化してきた中で、特に思い入れのある1台がある。「オクラホマにいる彼から電話があり、『今度の誕生日に何が欲しい?』と聞かれました。その日少し不機嫌だった私は、『60年代のフォードのピックアップトラックがいいわ』と答えたのです」。翌日、スティーブはあまり流通していない56年式のフォード車の写真を彼女に送った。価格はたった800ドル。「家に素敵な56年式のフォード車が届き、とても気に入りました。もちろん彼もね。そうして、2人で電動化することになったのです」

現在、2人はフロリダの緑豊かな森の中にある自宅を拠点に、車を電動化するビジネス「Green Shed Conversions」を順調に展開している。彼らの素朴なガレージでは、大胆かつ独特な方法で車の電動化が行われている。オードリーは米国でも数少ない女性のコンバートEV製作者として現在も活躍している。彼女のEVに対する情熱は、e-モビリティだけにとどまらない。より持続可能な地球を孫に託したいという気持ちが、彼女の原動力になっている。「次世代のために地球環境を守ることは、非常に重要であると考えています。電気自動車はそのためのステップね。環境を守るための課題は山積みで、1人の力だけでは解決できない。全員が一丸となって取り組まなければならないわ」

オードリーにとってEVと地球環境を守ることは密接に繋がっており、その考えの中心には愛があるのだ。

「自分1人でできることには限界があります。彼は私のベストパートナー。これまでの道のりは素晴らしいものでした」

— オードリー・クラン

A woman and a man standing between two green cars in front of a workshop.

クラン夫妻は今日も作業場へと向かい、彼らが愛してやまないコンバートEVを製作する