Business & Financial News | January 9, 2019

気候にやさしい化学生産に向けたイノベーション

(この資料は BASF本社(ドイツ)が 2019年1月10日に発表した英語のプレスリリースをBASFジャパンが日本語に翻訳・編集したものです。)
 
  • 意欲的なカーボンマネジメント・プログラムを実施し、研究開発活動で新たな可能性を開く
  • リサーチプレスカンファレンスにて、CO2を削減した未来の生産プロセスに向けた画期的な4つのプロジェクトを紹介

 

BASF(本社:ドイツ ルートヴィッヒスハーフェン)は、2019年1月9日、 本社にてリサーチプレスカンファレンスを開催しました。BASFが昨年発表した新たな企業戦略には気候保護がしっかりと組み込まれており、2030年までCO2排出量を増やすことなく成長することを主要な目標としています。これを実現するため、BASFでは継続的に既存のプロセスを最適化し、化石燃料を徐々に再生エネルギー源に置き換え、まったく新しい低排出の生産プロセスの開発に取り組んでいます。こうしたすべての取り組みが、BASFの意欲的なカーボンマネジメント・プログラムにまとめられています。リサーチプレスカンファレンスでは、こうしたプロセスに関する最新の研究成果や、気候にやさしい革新的な製品を発表しました。

BASF取締役会会長 兼 最高技術責任者(CTO)であるDr. マーティン・ブルーダーミュラーは、「気候保護の目標を達成するためには、CO2の排出を大幅に削減することが必要です。しかし、CO2を原料として使用するケースは限られており、そうした用途での利用は気候変動の抑制に大きく貢献するとは言えません」と述べています。BASFはこの数十年にわたり、生産プロセスの最適化と効率性の向上により、CO2排出の大幅な削減に取り組んできました。1990年以降、BASFは生産量を倍増させる一方で、温室効果ガスの排出を50%削減しています。「CO2排出量をさらに大きく削減していくためには、まったく新たな技術が必要となります。そのため、BASFは意欲的な研究開発プログラムを開始しました」とブルーダーミュラーは述べています。

化学反応を起こすためにはエネルギーが必要となるため、化学業界では化石燃料がCO2の最大排出源となっています。例えばBASFのスチームクラッカーはナフサをオレフィンと芳香族化合物に分解しさらなるプロセスで使用するために、850°Cという温度に上げる必要があります。このエネルギーに、現在一般的に使われている天然ガスではなく、再生可能エネルギーによる電気を使うことができれば、CO2の排出を最大90%削減することが可能です。そのためBASFでは、今後5年でスチームクラッカー用の世界初の電熱コンセプトの開発を目指します。同時に、どの金属材料が高い電流に耐えられるのか、こうした高温の化学反応炉における使用に適しているかを見極めるため、材料試験も必要となります。

水素の生成も大量のCO2を放出します。化学業界では、反応物質として多量の水素を使用しています。例えばBASFでは、水素をアンモニア合成に使用しています。水素も、将来の持続可能なエネルギー輸送やエネルギー貯蔵の用途において必要不可欠です。そのため、BASFはパートナーとともに、天然ガスから水素を生成する新たなプロセステクノロジーの開発を進めています。このテクノロジーは天然ガスを直接、その構成要素である水素と炭素に分解します。結果として得られる固体炭素は、鉄鋼やアルミニウムの生産などに使用できる可能性があります。このメタンの熱分解プロセスは、それほどエネルギーを必要としません。このエネルギーに再生可能資源を使うことができれば、二酸化炭素を排出することなく、水素を産業規模で生成することが可能になります。

新たな触媒の開発が成功には不可欠

オレフィンは、大量に使われる中心的な中間体として、BASFが新たな低排出プロセスの開発を目指す、特に重要な分野となっています。スチームクラッカーで現在使われている製造方法から排出される大量のCO2も、メタンのドライリフォーミング(DRM)によって大幅に減らすことが可能です。このプロセスでは合成ガスを作り出し、それがジメチルエーテルを経てオレフィンに転換されます。BASFの研究者は、新たな高性能触媒システムのおかげで、初めてこれを行う方法を見つけ出すことに成功しました。こうした新たな世代の触媒は、Linde社と協力して市場に提供されています。原材料と再生可能エネルギーによる電気の利用可能状況によりますが、この革新的なプロセスは、スチームクラッカーの電気加熱を補完するもの、あるいはそれに取って代わるものになる可能性があります。

また、BASFはCO2を化学原料として使用する新たなアプローチとして、エチレンとCO2からアクリル酸ナトリウムを生成する方法も紹介しました。アクリル酸ナトリウムは、おむつや衛生用品に広く使用されている高吸水性樹脂の重要な出発原料です。数年前、BASFが支援しているハイデルベルク大学のCatalysis Research Laboratory(CaRLa)の研究者が、この反応の触媒サイクルを初めて完結させることに成功しました。また、BASFの専門家はこのプロセスを産業規模に拡大するうえで重要な前進を遂げ、ミニプラントの実験室規模で実行できることを実証しました。現在のプロピレンベースの高吸水性樹脂の製造方法と比べ、この新たなプロセスでは、より規模の大きなプロセスでも安定しエネルギー的に有利なものであることが証明されれば、CO2が化石燃料の約30%に取って代わることとなります。

世界に展開するノウハウ・フェアブントにおける、最先端研究へのコミットメント

カンファレンスで紹介した4つのプロジェクトは、BASFの研究活動で取り扱っているユニークなトピックを代表するもので、画期的かつ革新的な飛躍への取り組みも含まれます。BASFは、研究開発費を前年までの高水準で維持していくことを目指しています。2017年の研究開発に対する支出は18億8,800万ユーロにのぼりました。2018年の研究開発費は、2月末の年次総会にて発表されます。BASFの研究パイプラインには約3,000件のプロジェクトがあり、研究開発に関わる11,000人以上の社員が世界各地でそれらのプロジェクトに取り組んでいます。ノウハウ・フェアブントにおいて重要な要素は、優れた大学や研究機関、企業とのコラボレーションネットワークです。

※このプレスリリースの内容および解釈については英語のオリジナルが優先されます。

 

BASFについて

BASF(ビーエーエスエフ)は、ドイツ ルートヴィッヒスハーフェンに本社を置く、世界をリードする化学会社です。持続可能な将来のために化学でいい関係をつくることを企業目的とし、環境保護と社会的責任の追及、経済的な成功の3つを同時に果たしています。また、全世界で115,000人以上の社員を有し、世界中のほぼすべての産業に関わるお客様に貢献できるよう努めています。ポートフォリオは、6つの事業セグメント(ケミカル、マテリアル、インダストリアル・ソリューション、サーフェステクノロジー、ニュートリション&ケア、アグロソリューション)から成ります。2017年のBASFの売上高は約600億ユーロでした。BASFは、フランクフルト(BAS)、ロンドン(BFA)およびチューリッヒ(BAS)の証券取引所に上場しています。BASFの詳しい情報は、www.basf.comをご覧ください。

January 9, 2019